nina1988の日記

東京に暮らすワーママが日々のことを綴る日記。主に美術館に行ったことなどの感想を綴ります。

美術館の楽しみ方 -絵を楽しむために知識はいらない-

美術館の楽しみ方について。私は美術館が大好きで、それは色んな意味でなのだが、建築も好きだし、作品も好きだし、そのアーティストが生きた時代のことを知ることも好きだし、とにかく包括的に美術館が大好きである。好きすぎて、大学では美術史を専攻した。そして、より一層美術全般に関することを好きになったのだが、一般的には、「美術なんて崇高なものは自分には関係ない」とか、「理解できないだろうから興味がない」とか、「どう見たらいいのか分からない」等という理由から、あまりポピュラーな興味関心事として挙がってこないような気がする。それどころか、アート好きであることをうっかり公言すると、「おしゃれっぽく振舞ってるだけ」「知的ぶってるだけ」「何がいいのか分からない」などと罵詈雑言を浴びせられ、袋叩きにされることすらある。(ほんとに)

 

確かに、大学時代には、アリストテレスの美の概念や、カントの美の解釈を、美学の授業で習って、分かったような気になり、尊大な態度を取っていたのかもしれない。(今思うとイタイような)それで袋叩きにされいたのかもしれない。もしそうだったらごめんなさい。しかし、そんな私ですら、美学の哲学的な部分は、今ではあんまり覚えていない。(勉強しなおしたいくらいだ)それでも、美術館にいくのはやめられない。それはやっぱり、「絵が好きだから」という根源的な部分にmotivateされているんだと思う。

 

「絵が好き」というシンプルな気持ちは、登山を好きな人が山を好きなように、ダイビングを好きな人が海を好きなように、本質的に私に備わっている感覚なのだと思う。だから、虹をみて「綺麗だな」と思う感覚と同じくらいシンプルに、絵をみて「綺麗だな」と思う人が増えたらいいなと思う。難しい理論や美学や歴史の知識などは一旦置いておいて。

 

難しい事を考えずに絵を見るために、これだけは知っておくといいと思う事がある。それは、美術館には、2種類あるということである。それは「所蔵作品がない美術館」と「所蔵作品を持つ美術館」の2種類である。

「所蔵作品がない美術館」とは、文字通り、所蔵作品を持たない美術館のことである。森美術館国立新美術館(両方六本木にあります)がこれにあたる。作品を持っていないので、だいたい企画展が開催されており、そのテーマに沿った作品を国内外や世界中からレンタルで集めてきて、その美術館に展示する、いわば「箱」としての機能である。こういう美術館のいい点は、いつ行っても何らかの企画展が開催されており、新しい作品に沢山出会えることである。

一方、「所蔵作品を持つ美術館」というのは、文字通り、美術館が作品を所蔵しているということである。その作品の持ち主は美術館ということになり、作品は美術館に所属していることになる。こういった美術館は、所蔵作品に加えて、国内外の美術館からレンタルした作品を加えて企画展を行ったり、所蔵作品のみで展示を構成する常設展を行うこともある。東京駅のARTIZON美術館(旧ブリヂストン美術館)や、横浜美術館東京国立近代美術館金沢21世紀美術館などがこれにあたる。

 

それで。なぜ私がこのような分類をしたか、というと、「ちょっと興味はあるけれど、絵の見方がよく分からない」という人は、後者の「所蔵作品を持つ美術館」に、何回か通ってみてもらいたいからである。そうすると、「行くと必ずある絵」というのがある。その美術館の顔といってもいい作品は、だいたいの場合は常に展示されている。その絵を何回か見ているうちに、中に描かれている人々に対して、「あ、こんにちは、また会いましたね」とか、「前に見た時よりこの女の子は悲しそうな顔をしているように見える」とか、色々自分の内面に湧き上がってくる感情の変化を楽しんだりできるのである。この楽しみ方は、自分の感じ方次第なので、美学とか理論とか難しい話は関係ない。自分がどう思うか、ということにフォーカスしてほしい。

 

例えば私は、ARTIZON美術館にある、ルノワールの『すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢』という絵が好きなのだが、

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初めて見た時(大学生のときにブリヂストン美術館に初めて行った時)は、「わ、長い名前の女の子だなあ」くらいにしか思わなかった。しかし、二回目見た時に、「あ、あの子だ」と、だんだんとその存在を意識するようになり、それ以降は、ブリヂストン美術館に行くたびにまじまじと眺めるようになってしまい、「おちびなのに大人の椅子に座っててかわいいな」とか、「床の装飾が綺麗だなあ、カーペットかな」とか、「おしゃれしちゃってどこに行くのかな」などと、もうジョルジェットちゃんのことで頭が一杯になるくらい、想像力を働かせ、可愛くて好きだなあと思うようになってしまったのである。

ブリヂストン美術館は、リニューアルのため、5年ほど休館期間を経て、ARTIZON美術館へと生まれ変わった。リニューアル後、久しぶりにジョルジェットちゃんと再会する頃、私は出産を経て母になっていた。すると、この絵の見方も全く変わってしまっていたのである。「ジョルジェットちゃんって4歳だったのか。大人びてるなあ。まだ息子の方が小さいけど、息子とは大違いだ」とか、「脚が寒そうだけどこれが描かれたのは夏なんだろうか。タイツ履いた方が良くない?」など、完全にジョルジェットちゃんを娘として見ている自分に心底驚いたのだ。(うちにいるのは息子だが)

 

こういう絵の楽しみ方が出来るのが、「所蔵作品を持つ美術館」の醍醐味であると私は思う。勿論、森美術館も新美術館も素晴らしい美術館で、私は何度も何度も足を運んでいる。森美術館なんて地上54階くらい?にあって、晴れた日の夕方に行けば、東京の地平線に沈む夕日と美しい夜景を楽しむことができるし、鑑賞のあとはすぐ飲みに行ったりと、デートしたりするのに最高の立地であるし、絵を楽しむだけじゃないエンタメが盛り沢山である。しかし、自分の内面と向き合う装置として、「所蔵作品を持つ美術館」に所蔵されている作品の中からお気に入りを見つけ、足繁く通ってみる、という鑑賞の仕方を、私はおすすめしたい。

 

次はどの美術館に行こうかな~