大塚国際美術館に行ってきた
先日、大塚国際美術館へ行ってきた。友人と関西方面へ旅行を計画し、そのメインイベントがこの大塚国際美術館だった。今回、息子を家族に託し私が完全フリーで遊びに出かけるという産後初の試み。本当に心の底からリフレッシュできた。
まず、道中の新幹線で大塚国際美術館についてググる(そこまでバタバタで旅行の下準備や事前学習は全くしていない)。大塚家が設立した美術館ときき、まず私が頭に思い描いたのは、大塚家具の、あのお家騒動だった。ああ、あの一家、美術館も持ってるのか。色々持ち物があると親族でもめるのは世の常か~なんて思いながらよくよくサイトを見ると、大塚製薬の大塚グループだった。
大塚製薬って、あ、ポカリとカロリーメイトの会社か。国民の生活に深く根差して日常に寄り添う製品を世に送り出すってすごいことだよな~などと考えている間に、大塚美術館に到着(友人が運転してくれていたので、私は助手席でぼーっとしてました)。
この美術館は、世界中の名画を陶板に原寸大で焼いて、それらを展示している美術館で、その規模がとにかくすごい。一番の見どころはシスティナ礼拝堂の復元で、壁一面、ミケランジェロの作品を模した陶板で埋め尽くされており、まさに圧巻としか言いようがない。私は本物のシスティナ礼拝堂には行ったことがないのだけれど、絵が視界を埋め尽くす様、そこに表現される聖書の物語を目の当たりにし、当時の人々がそこで信仰心を篤くしたであろうことを思った。本物ではなくても、本物と同じような体験をさせてもらった。本当にまるでイタリアにいるような気分になれた。
全部を観るのには3-4時間かかった。サクサク見進めて3-4時間だったので、じっくり眺めたい人は、丸一日かかると思う。
ここで、私が考えた大塚国際美術館の楽しみ方について、まとめてみたい。
(1)美術史を感じる
この美術館には、西洋近代の名画は勿論なのだが、古代の作品を模したものも、とても多い。ローマ帝国の遺跡の復元とか、ビザンツ帝国の教会の復元とか、「モネ!セザンヌ!ルノワール!」みたいな、分かりやすく日本人が好きな作品と、これらの古代の作品が同列で展示されていることに、大変好感を持った。きっとこの美術館を作った大塚家のみなさんと、どの作品を制作するか選定にあたった方々が、そのへんのバランスをものすごく熟考されたのではないかと察した。分かりやすく人気取りをしたければ、この作品を選ばないよな~というラインナップが、古代から中世の作品群に多く感じられた。
個人的に気に入ったのは、ビザンツ様式の作品がたくさんあったこと。ユスティニアヌス帝のモザイク画には、とりわけ興奮してしまった。世界史の資料集でよく目にしていたからね。ビザンツ様式の作品は、教会の壁画であることが多く、つまり持ち運べないから、その場に行かないと見ることが出来ない。そういう教会は、だいたいアクセスが悪かったり、一般的な観光都市ではない街に建てられたりしていて、日本からわざわざ見に行くのは、限られた時間や予算では、本当に大変!先に述べたユスティニアヌス帝のモザイク画は、イタリアのラヴェンナにあるサン=ヴィターレ聖堂にあるのだけれど、行きかたを調べると、ミラノから電車で2時間半ほど。成田から静岡県に行くくらいの感覚?とにかく、日本からはめちゃ遠い。こういう日本から見に行こうとすると非常にアクセスの悪い美術作品が、一気に見られるということは、本物ではないことを考慮しても、ものすごく大きい価値だと思う。
古代~中世~近代の作風の変化を楽しみながら、美術史を深く学べる設計になっていて、ただのエンタメ施設ではなく、教育文化施設としての責任を全うしようとする姿勢に、大変感銘を受けたのでした。
ユスティニアヌス帝のモザイク画
妻のテオドラ
ウラディミルの聖母子像。
モスクワにある。これは見に行きにくくなってしまいましたね…。かなしい。
(2)気に入った作品を、実際に見に行くという楽しみ方
この美術館ストーリーに書いてあるのだけれど、
「これをよく見ていただいて、実際には大学生の時に此処の絵を鑑賞していただいて、将来新婚旅行先の海外で実物の絵を見ていただければ我々は幸いと思っております。」
なんという心意気。サービス精神。というか三方よしの精神。学生旅行で徳島県にお金を落としてもらいつつ思い出を作ってもらい、本物をみるモチベーションを醸成し、いざ本物を見に行く時、その国にもお金を落とすという。みんながハッピーになる仕組み。大企業のパトロンが社会貢献をしようとすると、とんでもない域まで到達できるんだな、、という圧倒的パトロン力を見せつけられました。大塚製薬が大好きになりました!
(3)知っている作品にまた会えたねという気持ちになれる
大塚国際美術館の作品は、全て本物がどこにあるかがきちんと記載されている。「あれ?この絵、どこかで見た気がするな~、あ、プラド美術館か、やっぱりね、見てるわ、これ」「こっちは上野のフェルメール展に来てたやつだ。本物は上野で見てるわ」という気持ちになれる絵が沢山あった。その時に本物を見た時の自分を思い出し、あの時はこんなことで悩んでたな、とか、あの旅行、ほんとに楽しかったな、とか、その絵を見た時の自分を振り返る内省的な時間をゆったりと持つことができて、本当に有意義だった。(友人とはつかず離れずの距離感でお互いあまり干渉することなく絵を愉しんでいたので、自分を振り返る時間が持てた。こういう距離感や感覚が合う友人は本当に貴重だし大切)
(4)大自然
鳴門海峡のほとりに建てられたこの美術館に足を運ぼうとすると、自然を感じないわけにはいかない。穏やかな凪の瀬戸内海、温かく優しく降り注ぐ日差。あれ、ここって地中海なんじゃ…?と錯覚。心の底から、非日常感というか、海外旅行感というか、わたし!いま!リフレッシュしてる!!!を感じた。都会でPCやタブレットや複数のモニターに囲まれてあれやこれやと仕事をしている人は、全部オフにして行ってみてほしい。ほんとうにリフレッシュできるから。
翌日には、ちゃっかり渦潮船にも乗り、海の、自然の大きな力を感じてきた。この強いうねりが、美味しい魚やワカメを育むのね…。と。
というわけで、初めてきちんと観光した徳島県、大好きになりました。時間や予算に余裕がある方は、船に乗って小豆島や直島と併せて観光し、瀬戸内の魅力と現代アートを存分に感じる旅を計画することも出来ると思います。ぜひまた行きたいです。